皮膚の歳時記

世田谷区の皮膚形成外科、千歳台きたのクリニックです。季節の変化と皮膚の健康の関係は切っても切り離せません。季節ごとの皮膚のお話をちょっとずつお伝えします。
異次元の家庭生活
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     年初あたりから、我が家は異次元の家庭生活に突入しました。
    その中心となったのは、2月に我が家に迎え入れた子犬の「ナギ」。
    いやほんともう、家の空気が一変しました。
    わんこが、こんなに癒しになるとは・・・
    私たち夫婦にとっては、3番目の子供・・・ではなく、まさに、「孫」ですわ。

    わんこ自慢はきりがないので、
    ナギがきっかけで始めたことを一つ。

    ナギが一通りの予防接種を終えるまで、外出外食というわけにもゆかなかったので、どうしても家で過ごす時間が長くなりました。
    5月の連休をゆっくり家で過ごしているうちに・・・
    狭い狭い我が家の庭の一角が、やけに明るいのに気づきました。
    住宅密集地ゆえに「日陰の庭」にしかならなかったのですが、
    周りの家が次々に建て替えした結果、日差しが多少降り込むようになったのです。
    観察すると5月連休の時点では、午前2時間、午後1時間半の日照。
    でも、もっと日差しが高くなると、一日中お日様にあたりそうです。

    そこで、初めての野菜作りに挑戦。
    草を引き、ホームセンターで鍬やら石灰やらを買って、土を掘り起こし、
    土づくりからスタート。
    ホームセンターには、トマトやキュウリの苗を買い求める人でごった返していました。
    私も、負けじと購入。
    起こしたての畑に植えてしまいました。
    それ以来、毎朝夕、野菜たちとにらめっこです。

    | kitanohifukei | あれこれ | 20:31 | - | - | - | -
    レーザー閑話:その4
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       前回まで、エルビウムヤグレーザーを讃える内容を書きすぎたような気がしますので、
      今回は炭酸ガスレーザーを擁護する内容を書きます。

      私のクリニックでは、エルビウムヤグレーザーが主役になったとはいえ、まだまだ炭酸ガスレーザーの出番はあります。
      炭酸ガスレーザーの利点を挙げてゆきましょう。

      1)ビームが細い。
      2)熱伝導が問題にならない組織ならばOK

      前回までに見てきたように、炭酸ガスレーザーは、周囲にどうしても熱を伝えてしまいますので、熱がまわりの皮膚に伝わりづらい組織なら、熱伝導の問題は生じません。
      また、ビームの細さは、最低で0.2个函▲┘襯咼Ε爛筌哀譟璽供爾1个5分の1ですから、ものすごく小さな対象を治療する場合には有利です。

      この点、首のアクロコルドン(首のイボ)は、皮膚から突出した小さい構造物です。熱の大半は空気中に放散し、皮膚に伝わりにくいので、炭酸ガスレーザーでも大丈夫です。また、ものすごく小さいイボに対しては、ビームが細い炭酸ガスレーザーの特徴を生かすことができます。

      さらに、メスのように「切り取る」目的で使用するためには、ビームが細く、止血作用がある炭酸ガスレーザーが有利です。

      3)止血作用がある。
      照射部位にタンパク変性を起こすことは、組織を壊死させることではありますが、止血させることでもあります。止血が必要な治療には、積極的に炭酸ガスレーザーを使用します。

      4)水分が多い組織では、スムーズな蒸散となる。
      炭酸ガスレーザーは、水分の少ない組織では焦げやすく、多い組織では、純粋な「蒸散」に近づきます。
      脂肪線維腫のような水が多い組織ならば、炭酸ガスレーザーでも理想的な蒸散に近い治療になります。

      逆に、組織内深くまで蒸散させなければいけない対象物、たとえば、ほくろや汗管腫、脂腺増殖症などでは、周囲の皮膚に熱が伝わりづらいエルビウムヤグレーザーが圧倒的に有利です。

      こんなかんじで、エルビウムヤグにこだわっているわけではなく、時と場合により、使い分けています。
      | kitanohifukei | レーザー | 20:00 | - | - | - | -
      レーザー閑話:その3
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         卵をうっかり電子レンジにかけて、粉々に爆発させた経験はお持ちではないでしょうか。
        エルビウムヤグレーザーの反応は、この現象によく似ています。
        電子レンジは水分子を選択的に振動させます。水が急に蒸発することにより、水を包んでいた組織の中では急激な膨張が起こり、卵は爆発します。卵のタンパク質は固形の粉となって飛び散ります。

        エルビウムヤグレーザーで起こる「蒸散」も、「電子レンジの爆発卵」と同じく、「水の急激な蒸発による爆発」です。ただし、卵のような大爆発ではなく、せいぜい直径1-3ミリの小爆発です。

        さて、同じエネルギー量の炭酸ガスレーザーとエルビウムヤグレーザーを照射してみます。
        照射する対象は、前回と同様、水分を豊富に含む組織です。

        エルビウムヤグを照射すると、エネルギーが小さいボリュームに凝縮されますから、1パルスで水分子はごく短時間に蒸発し、「爆発」を起こします。タンパクは粉々になり、吸引器へ吸い込まれます。これが、「蒸散」です。
        この時の温度は100℃を超えません。
        これに対して、炭酸ガスレーザーを照射されると、エネルギーがより大きい組織に分散吸収されます。このため、温度上昇は非常に緩やかで、一回のパルスででは100℃の蒸発温度に達しません。

        炭酸ガスレーザーでは、2パルス、3パルスと、パルスを重ねるごとに徐々に温度が上がり、10ショット終了したところで100℃に達するので、「蒸散」が起こるはずです。

        2パルスまで

         


        それならば、10回照射すれば両方とも同じ結果になるような気もします。
        しかし、10回照射するために費やした時間はそこそこ長く、
        その間に、照射部位に蓄えられた熱エネルギーは、周囲の組織へ逃げて行ってしまいます。

        その結果、照射された部位の温度はそれほど上がりません。100℃にならない部分も出てくるでしょう。ついでに、周囲の組織も、ゆっくりと温度が上がります。
        短時間で目的部位が100℃に達するエルビウムヤグレーザーと異なり、
        炭酸ガスレーザーでは、広い範囲で60℃ー90℃ぐらいの温度がじりじりと続きます。
        この温度帯では、タンパク質が変性して固くなるとともに、水がゆっくり抜けてゆきます(水は100℃未満でも少しずつ蒸発します)。
        水が少しずつ失われるので、「急激な膨張」による「爆発」が起こりづらくなります。

        繰り返し照射するうちに、事実上、「水がなくなってしまう」部分ができます。すると、
        「水のない組織」へ照射するのと同じ現象が起こります。

                溶き卵をフライパンで弱火にかけると、タンパクが固まるとともに、
                ゆっくりと蒸発してカラカラの干物のような状態になります。
                次に「焦げ」が始まります。
                こんな状態を思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。

        高野豆腐の実験に見られたように、「水分の少ない」組織に炭酸ガスレーザーを照射すると、100℃どころか300℃以上に温度が上昇し、燃焼と炭化を起こします。
        照射を受けた部位は、300℃で炭化・崩落するまで、組織内にとどまりますので、2次的なやけどの原因となります。

        しかも・・・「高野どうふ」と違い、生体では「生命である」ことを維持できる温度の上限が60℃ぐらいなので、60℃を超えてしまった組織は、「死ぬ(壊死する)」ことになります。

        ここでようやくつながりましたね。
        炭酸ガスレーザーを主語として話をつなぐと、

        炭酸ガスレーザーでは水の吸収が10分の1と弱い

        照射対象と周囲組織の温度がゆっくり上がる。

        タンパク質の変性と脱水が起こる。

        「水分量の少ない」部分ができる。

        レーザーー照射を続けると、蒸散されず、温度が300℃付近まで上昇する。

        焦げる

        炭酸ガスレーザーでは、
        蒸散されずに変性・壊死する残存組織も「レーザーによって失われる」組織です。
        したがって、目で見えるよりも多くの組織が「失われる」結果になります。

        炭酸ガスレーザーで「変性・脱水・壊死」をできるだけ回避するためには、葛西健一郎先生が述べられているように、「強いパワーで照射する」必要があります。これには非常に高度な技術が必要です。
        しかも、

         


        このような繊細な芸術品を彫るとき、一刀のもとに目的の形に達することは不可能でしょう。
        実際は、少しずつ丁寧に削ってゆくしかありません。

        レーザーと彫刻品では、話が違いすぎるのは確かですが、
        ほくろなどを治療するときには、術者のイメージ通りの深さと形で削るために、時間をかけて微調整を行うことは必須なのではないでしょうか。
        「少しずつ丁寧に削る」。これは炭酸ガスレーザーでは許されなかった行為ですが、
        エルビウムヤグレーザーでは可能となりました。

        | kitanohifukei | レーザー | 21:50 | - | - | - | -
        レーザー閑話:その2
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           さて、前回は、炭酸ガスレーザーとエルビウムヤグレーザーについて、次のことを述べました。

          1)いずれも、水分がない組織では「燃焼・炭化」が起こり、組織温度は300℃に達する。
          2)水分が豊富な組織では、エルビウムヤグレーザーでは、ほぼ100%「蒸散」が起こり、最高温度は100℃である。炭酸ガスレーザーでは、蒸散も起こるが、燃焼・炭化も部分的に起こるため、局所的に300℃に達する。

          もちろん、「水分がない」組織と「水分が豊富」の中間ぐらいの組織、たとえば「水分がちょっとある」組織なんかでは、エルビウムヤグレーザーでも「炭化」は起こります。ですから、これは、「蒸散」と「燃焼」の割合の問題であり、エルビウムヤグレーザーのほうが、「蒸散」比率が高いと解釈するほうがより正確です。

          ではなぜ、エルビウムヤグのほうが「蒸散」割合が大きく、炭酸ガスレーザーのほうが「炭化(焦げ)」割合が大きいのか。
          この疑問について、インターネットなどで調べると、多くのサイトが以下のように説明しています

          「エルビウムヤグレーザーは水への吸収が炭酸ガスレーザーの10倍なので、焦げないシャープな切れ味になる。」

          ・・・・・・・

          この説明で分かる人は素晴らしい!!
          私はぜーんぜんわからなくて、頭を抱えてしまいました。
          この文脈、

          「水への吸収が10倍」→ブラックボックス→「焦げない」

          ではないでしょうか。端折りすぎじゃないかなあ・・・

          この問題はまず、「水への吸収とは何か」から考えなくてはいけません。
          「10倍」なんて、具体的な数値が書いてあるからには、もととなる数式があります。

          「ランベルト・ベールの法則」
          という有名な数式なのですが、数式を書くと頭が痛くなる人もいるかもしれないので、できるだけ省きます。

          「水への吸収が10倍」というのは「吸光係数が10倍」を言い換えたものです。
          この法則から私たちが欲しい情報を抜き出すと、


          「吸光係数」と「一定量のエネルギーが減衰するのに必要な距離」は反比例の関係になります。

          なお、この部分については、以前ブログでご紹介した松尾先生にヒントをいただきました。

          つまり、吸光係数が10倍だと、同じ量の光エネルギーが組織に吸収されるまでに光が進む距離は10分の1になります。
          「水への吸収係数」で考えていますので、ここでの「組織」とは、相当水っぽい組織を考えています。
          99%水分のクラゲやこんにゃく、
          80%水分の「高野豆腐モデル」
          あるいは、70%水分の皮膚など。

          エルビウムヤグレーザーでは、同じ量の光エネルギーが、炭酸ガスレーザーの10分の1のボリュームの組織で吸収されます。
          吸収された光エネルギーは、すぐに熱エネルギーに転換されます。
          つまり・・・

          エルビウムヤグレーザーでは、小さい組織の中に高いエネルギーが凝縮されますので、急激に温度が上昇します。

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          これで「炭酸ガスレーザーでは焦げるけれど、エルビウムヤグでは焦げない」につながりましたか?
          まだつながらないですよね。
          「え?炭酸ガスレーザーのほうが温度が上がるんじゃなかったっけ?」みたいな疑問も出てくるかもしれません。
          もうひとひねり、必要です。

          | kitanohifukei | レーザー | 22:50 | - | - | - | -
          レーザー閑話:その1
          0

            エルビウムヤグレーザーを導入してから2年。当院では、炭酸ガスレーザーの出番がめっきり減り、代わりにエルビウムヤグレーザーが頻繁に登場します。
            なぜ、エルビウムヤグレーザーでは、炭酸ガスレーザーに比べて周囲への熱ダメージが少ないのか、いろいろ調べてもあまり納得のゆく答えが得られなかったので、ひとつ、実験をしてみました。

            使用したのは、「旭松の高野豆腐」。
            「高野豆腐」を選んだ理由は、これが生体と同様、ほぼタンパク質でできていることと、乾物の状態では「水なし」の反応を、水を含ませると「水あり」の反応を見ることができるためです。
            また、「水あり」では、水分の割合が80%と、人間の皮膚にかなり近い水分量になるのも、モデルとしては魅力的です。

            kouya

            ・・・乾いた状態と水を含んだ状態ではかなり反応が違うことがわかります。

            一般的に、「蒸散系レーザー」は、「水に反応する・水を吸収する」点のみが強調されます。でも、実際は「水がない状態でのタンパク質」への反応を考慮せずに、レーザーの性質を語ることはできません。
            しかも、上の写真で分かるように、水があるときとないときでは、その反応が全く異なるのです。

            水がない時の反応は「燃焼・炭化」です。炭化すると、組織は崩壊しますので、それ以上温度は上がりません。したがって、「水がないときには、炭化温度、すなわち300℃ぐらいの熱が出る」といえます。これは、炭酸ガスレーザーにもエルビウムヤグレーザーにも言えることです。

            これに対して、下の「水あり」の実験。
            エルビウムヤグレーザーを照射すると、炭化が起こらないのに組織が消えています。
            これが正真正銘の「蒸散」反応です。すなわち、水を瞬間的に蒸発させるときの爆発力で組織が粉々に破壊されているのです。
            水の蒸発温度は100℃ですから、温度は100℃より上がりません。

            一方、水ありの組織に炭酸ガスレーザーを照射すると、蒸散だけではなく、部分的に炭化も起こっています。したがって、部分的には300℃ぐらいに達しているのでしょう。

            このように、「燃焼」と「蒸散」の割合が、レーザー治療のクオリティを決定します。
            一般に炭酸ガスレーザーはエルビウムヤグレーザーに比べて「燃焼・炭化」の割合が大きいのですが、組織の水分量によっても大きく左右されます。

            人間の皮ふは70%水分であるといわれていますので、スムーズな「蒸散」を期待できるような気がします。
            しかし、治療の対象は「正常な皮膚」ではなく、「腫瘍」という異常な構造物です。腫瘍の種類によっては水分量が少ないこともあります。ですから、「炭酸ガスレーザーの臨床的反応は『蒸散』である」というのが成り立たない場面も多々あるのです。

            というわけで、「エルビウムヤグレーザーが炭酸ガスレーザーに比べて組織損傷が少ない理由」:
            炭酸ガスレーザーは、水分豊富な組織あっても300℃付近まで温度が上がるのに対して、エルビウムヤグレーザーは100℃より上がらない。
            これが大きな理由となっているのではないでしょうか。

            では、なぜエルビウムヤグレーザーではスムーズな「蒸散」がおこるのか?(NHKみたいですね)
            それは、後日また、ブログでお話したいと思います。

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            ところで、炭酸ガスレーザーを照射された組織の温度については、異論があります。
            首をかしげてしまうのが、あるレーザー会社のサイトでの説明です。

            「炭酸ガスレーザーでは1500℃に達して、組織が『気化する』。これを『蒸散』という」と書かれています。
            この件は、以前「コピペのサイエンス」という題名で書いたようないきさつがあり、会社のほうは間違いを認めたのですが、その後もHP上の記載を変えていないようです。
            http://saijiki.kitanohifukeisei.com/?day=20100718
            1500℃の根拠を会社の人も示すことができないので、なぜ1500℃なのか、いまだ持ってわかりません。
            別のレーザー会社の技術者に意見を求めたところ、「1500℃はあり得ない」とのことでした。

            また、もう一つの異論は、ある皮膚科の教科書。
            「炭酸ガスレーザーでは温度は100℃以上に上がらない」と書かれています。
            これは、1500℃よりは誠実な記載だと思いますが、100℃では炭化は起こりません。
            「純粋な蒸散反応では100℃以上に上がらない」という文ならば納得できます。
            現実には、炭酸ガスレーザーの「蒸散」が不完全なため、100℃を超えて300℃ぐらいまで達してしまっているのではないでしょうか。

            さて、炭酸ガスレーザーにおける到達温度は、100℃?、300℃?、1500℃?
            私はやはり、炭化が起こる状況においては、300℃付近ではないかと思っています。

            こういう遊びは一見診療と関係なさそうに見えますが、
            どういう組織にどのレーザーを、どのぐらいの強さで照射するかを決定するヒントになります。
            ちなみに、高野豆腐はその夜のおかずとしておいしくいただきました。
            | kitanohifukei | レーザー | 22:47 | - | - | - | -
            「優しい」仕事
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              数週間前、高校時代の友人から、あるPDFファイルが届きました。その内容に胸を打たれたので、ちょっとご紹介したいと思います。

              1970年ごろ、現東北大学教授の水野紀子先生が、研究人生を始めるに当たり、恩師の加藤一郎・法学部教授からかけられた言葉です。

              加藤一郎

               

              出典は「ジュリスト」という、法律関係の雑誌。ちなみに、加藤一郎先生とは、東大総長、成城学園学長を務められた大学者であり、現小宮山洋子厚生労働大臣のお父様であられる方です。そういう「エライ先生」の言葉であることを意識すると見方が曇ってしまうので脇に置いておいたほうが良いかもしれません。

              ・・・・・・・・・・・

              どうでしょう、文全体にあふれてくる優しさと、人間尊重の姿勢。

              まずは、以下の言葉が圧巻です。

               

              「法律の論文は、技術的なもののように思うかもしれませんが、債権譲渡のような技術的なことを書いているようでも、どうしてもそれを書いた人間が出てしまいます。」「優しい人の書いたものは優しい論文になるし、そうでない人の書いたものはやはりそうなってしまう。」「人間らしい論文を書くためには、背景に人間らしい生活を送る必要があります。」

               

              何でもよいですから、ご自分の仕事を、上の「論文」の部分に代入してみてください。少し仕事が輝いて見えませんか?

               

              私は、職業柄、「論文」を「手術」に置き換えて読んでみました。

              「手術は技術的なもののように思うかもしれませんが、単純結紮縫合のような単純な技術であっても、どうしてもそれをする人間が出てしまいます。優しい人の手術は優しい手術結果になるし、そうでない人の行ったものはやはりそうなってしまう。人間らしい手術を行うためには、背景にに人間らしい生活を送る必要があります。」

               

              「手術」は、無機質で「技術的な」医療行為とみなされる最たるものではないかと思います。患者さんに覆い布をかけてしまうと、基本的に、誰が何をしているのか、患者さんにはわかりません。メスを入れる、剥離をする、止血する、縫合する。それは誰が行っても同じであり、「人間らしさ」とは対極にあるように思われているのではないでしょうか。

               

              しかし、私が大学の研修医のころに会得したのは「手術には顔がある」ということです。

               

              東大病院がまだ、古い建物だったころ、当時研修医だった私たちは、外来の看護婦(当時は看護師ではなく、看護婦でした)さんたちにけっこう「かわいがられて」いました。

              なにかと看護婦休憩室にいりびたり、いろいろな先生のうわさや世間話を楽しむ中に、看護婦さんたちは、「○○先生は手術がうまいのよ」というのですが、彼女らの「うまいのよ」には、「ウンマインのよ」とか、「ウ〜ンマインのよ」などの言葉の微妙なニュアンスの違いがあり、当然、最高評価を受けている先生の技術を盗もうと切磋琢磨したものでした。

              大学病院と言っても外来手術ですから、現在当院で行っているような局所麻酔の手術のレベルの話です。

              当時教授であられたの福田修先生の手術は、縫った傷を他の医師が見ただけで、「福田先生が縫われたんですね」と言われるほど、見事な縫合でした。福田先生は「2週間も手術をしないと手が鈍る。」とおっしゃるような芸術肌で、その手術結果はまさしく、丹精込めた芸術(作品、とは言っていけないのでしょうか?)でした。
              「福田先生に手術してもらえるなんて幸せですね」
              手術を受けた患者さんは、スタッフからそのように言われました。(今もいわれているとお聞きします。)

              時代の流れにより、現在では「全国どこでも同じ医療」が行われるのが理想であると考えられ、手術に個人的な「顔」は認められない傾向があります。
              しかし、現実はいかがなものでしょう。手術する我々は、機械ではありません。人間の手、人間の頭が生み出すものは、誰が行うかによって少しずつ違います。それは、術者の手術への姿勢、物事の考え方、すなわち「人間らしい生活」の反映ではないでしょうか。「顔がある手術」とは、なにも、奇抜なアーティスティックな手術ではありません。ほんの一ミリ、0.5ミリの切開や止血の度合、糸をかけるほんのわずかな組織量などに「その人」が反映されます。

              「結果が同じならば誰に手術されたって同じ」「そんな細かいところに気を付けたって結果は同じ」という考え方もあります。

              名人の手術であっても、時には、体質や偶発的な経過のために、思わしくない結果になることもあります。ただ、そのような場合こそ、本気で取り組む医師であるかどうかで、仕事の価値は違ってきます。

               

              さて、続きを・・・・
              「そしてできれば貴女には人間らしい顔をした論文を書いてもらいたいと僕は思います。」「人間らしい生活をするとは、結婚して子供を持つことだと思います。」「あなたは女性だから大変かもしれないが、がんばりなさい。僕もできるだけのことをするから」

               

              これも素晴らしいですね。仕事を始めるにあたり、上司に、それも男性の上司にこのようなことを言ってもらえるのはこの上ない喜びではないでしょうか。仕事をやる気にさせる言葉だと思います。

              しかも、この会話の舞台はは1970年代。

              当時、東京大学は封建主義の極みの大学。女性が学究的な研究をしようと思うと、門前払いを食らわされるか、「女を捨てること」「結婚しないこと。子供を産まないこと」を約束させられるような時代でした。その時代に、加藤先生は、よくぞこのようなことをおっしゃったものだと思います。

              私が全く存じ上げないお二人の話であり、実際はどのような方々かは全く知らないのですが、心が洗われるような気がいたしました。

               

              「『優しい顔を持つ仕事』をしてほしい。そのためには『人間らしい生活』を送ってほしい」

               

              少子化時代の生き方のカギになる言葉ではないでしょうか。

               

               

               

              | kitanohifukei | 仕事について | 21:41 | - | - | - | -
              当院の外科手術
              0
                千歳台きたのクリニックには、夫と私の医師二名が常駐しています。
                二人とも外科手術が得意ですから、私どもの技量を皆様に活用していたきたいと考えています。
                手術の前には二人で討論して方針を決めることもしばしばあります。
                外科手術はチームワークが重要。二人で手術をすることは、1+1=2ではなく、1+1=3ぐらいの価値があるのでは?

                というわけで、HPに手術の欄をリニューアルしました。
                当院のHPは、私の妹に作ってもらっているので、制作は素早いのですが、それでもupまでに数日かかりますので、とりあえずブログでご紹介します。

                当院の皮膚外科手術

                 

                1.     手術の適応を吟味する

                 皮膚の腫瘍に対して「手術をするべきかどうか」を吟味するときに重要なのが1)術前診断、2)患者さんの意思、3)担当医の手術への自信、だと考えています。

                術前診断にて悪性が疑われる腫瘍の多くは、すぐに手術をしなければいけません。一方、良性腫瘍の場合は、すぐに手術をする必要はありません。良性腫瘍を手術するかどうかの決定は、基本的に患者さんの意思に任されます。良性腫瘍であっても、手術を引き延ばしているうちに、結局感染したり、大きく育った結果、大手術になる場合もあります。一方、将来それほど大きな問題を起こさない腫瘍もあります。これらの面を含めて患者さんに十分ご説明させていただきたいと思います。

                当院では、術前診断に、問診・視診・触診のみならず、ダーモスコープや超音波診断装置などの器具を使い、できる限り正確な腫瘍像を描きます。また、我々の長年の経験から、技術的には相当に大きい皮膚腫瘍まで対応が可能です。

                2.     手術前よりも美しく

                 皮膚の腫瘍手術では、「悪いものを取る」という目的とともに、「手術前よりも見た感じが良くなる」ことが強く要求されます。腫瘍を取ったものの、醜い傷跡が残ったというのでは、何のために手術をしたのかわからなくなる場合があります。当院では、形成外科技術により、腫瘍を取る方向や糸の選び方・かけ方、アフターケアに至るまで、「どうせ手術するならばきれいに取ろう」の精神で、きれいな手術を行います。

                3.     土曜日・日曜日も手術を行います

                平日働いていらっしゃる方は、皮膚手術のためにウィークデイを休みづらいため、つい、行うべき手術を先延ばしにし、腫瘍が大きくなったり、感染してしまうことが良くあります。私どもは、このようなケースにしばしば遭遇したため、土日に手術をお引き受けできる体制作りが必要だと感じることがしばしばありました。このため、2011年春から、土曜・日曜も手術をできるようにいたしました。「しこり」「できもの」を発見されましたら、先延ばしせず、できるだけ早いうちに手術をお受けください。

                4.     医師が二人いる安心

                手術には、腫瘍などの大きさや位置によっては、二人の手が必要な場合があります。また、安全管理の上でも、より適切な対処が可能と考えています。

                 

                 

                 

                 

                | kitanohifukei | 仕事について | 23:17 | - | - | - | -
                チャリンコ旅日記
                0
                   最近腹が出てきたうちのオッサン。
                  「これはヤバイ」というので、自転車通勤を始めましたが、
                  そんな程度じゃ引っ込んでくれません。
                  もっとハードな運動を、ということで始めたのがサイクリング。
                  今日は車に折り畳み自転車を積んで、河口湖+西湖+精進湖+本栖湖のまわりを走ってきました。

                  スマホ時代に便利なのが、”ルートラボ”というサイト。
                  ここから、湖を回るルートを探しました。

                  http://latlonglab.yahoo.co.jp/route/watch?id=a2579f9b1358796015a04cf17bf0a999

                  高低差がわかりやすいので助かります。

                  実は私たち夫婦は、25年前、大きな荷物をしょって輪行していました。
                  初めての輪行は、本四連絡船を降りた高松からはじまり、琴平、池田、祖谷渓、高知、足摺岬、柏島へとこいでゆきました。
                  ユースホステルを利用しての旅は「チャリンコ旅日記」として詳細に記録し、私たち夫婦の永久保存版となっています。
                  さあ、四半世紀を経て、旅日記の再開かな?
                  河口湖にて 河口湖にて

                  さて、このルート、139号線が道幅が狭く、交通量が多かった以外は、車も人も少なく快適なポタリングでした。
                  とくに、本栖湖はさびしいぐらい人がいませんでした。湖の青さ・深さは印象的です。
                  夕方に走った西湖の南道路。夕日が水面にぎらつき、とても素敵です。
                  この道路は小さい入り江を忠実になぞってゆくので、ときどき、走りながら湖を正面にとらえることができます。

                  高低差が少なく、距離が適当ということで選んだ本日のルート。
                  終わってみれば、首が凝ったり腰が痛くなったり。
                  さすがに25年前とは、体のきしみ方が違います・・
                  | kitanohifukei | 趣味 | 22:53 | - | - | - | -
                  陥入爪治療の現状
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                     自費診療は、「これこれの価格でこういう治療を行います」ということを、患者さんと医師がお互い了解してスタートする診療です。
                    そこには、基本的に「緊急性」はありません。
                    また、「主観的な必然性(患者さん本人は必要だと思っている)」、はあっても客観的な必然性はあまりありません。
                    「緊急性、必然性がある診療は健康保険がカバーすべきである」「保険医療は『善』である」という考えが、日本の保険医療の根幹である・・・と思っていたのですが、

                    残念ながら、この「根幹」は必ずしも万能ではありません。
                    私の身近な診療で感じるのは「陥入爪」治療。
                    私が医師になったころの主流は「楔状切除法」という手術。
                    これは陥入している部分を、皮膚ごと爪母までざっくりと切り込み、太いナイロン針で皮膚の上に爪を重ね合わせる方法です。
                    この方法は、保険適応でした。
                    次に主流になったのは「フェノール法」。
                    この方法も、時を経ずして、保険適応となりました。

                    ところが、数年前から、「フェノール法は悪い方法である」との主張が出てきました。
                    フェノール法を受けた後に、かえって爪の状況が悪くなった例を多数提示し「フェノール法はやってはいけない」とまで言われるようになりました。
                    フェノール法への弾劾は、それに代わる「矯正法」の出現に伴って起こったものです。
                    まあ、矯正法が優れているのはわかるのですが、そこまで過激にフェノール法を責めるべきではないだろう、と私は思ってしまいます。
                    実際、フェノール法でうまくいっているケースのほうが圧倒的に多いのです。

                    かくいう私も、この数年間で「矯正」を取り入れるようになってきました。
                    私の医院では幸い、かのアンチ・フェノール法医師が示すような「フェノール法で悪化した」ケースはなく、ほぼ平和な結果となっています。
                    にもかかわらず、矯正のほうが優れていると思われるケースが増えてきました。
                    純粋に「科学的:医療的」な見地から考えると、かつて(矯正法がなかった時代に)フェノール法を行っていたケースのうち、約50%は矯正法のほうが良く、30%はどちらでも良いように思われます。

                    なんといっても「切らずに済む」というのは、患者さんにとってうれしいことではないでしょうか。
                    陥入爪による痛みは、ワイヤーをかけたその瞬間からなくなります。
                    フェノール法と違い、治療によって爪の幅が狭くなりません。
                    治療自体が痛くなく、出血しません。
                    ただし、ワイヤーを外すと、陥入爪の状態に戻ります。

                    フェノール法の利点は、「根治術である」点です。
                    フェノール法は、爪の形にもよりますが、基本的に再発しません。
                    爪の形によってはフェノール法ではうまくゆかない場合があります。

                    治療現場では、爪の形・状態による適応や、患者さんの希望を伺いながらどちらかの方法を選択します。
                    しかし、この選択は、「公平な選択」と言えるのでしょうか。

                    フェノール法は保険適応ですが、矯正法には保険が適応されません。
                    陥入爪には、「緊急性」があります。患者さんは痛くて痛くてしょうがないのです。日常生活がつらくてたまらないので、なるべく早い治療が必要です。
                    「痛いから何とかしてほしい」と訴える患者さんに対して、
                    「保険のフェノール法が良いか、自費の矯正が良いか?」という選択肢をどう提示するか・・・
                    保険診療よりも自費の矯正法が「優れている」と思う場面が多いだけに、悩みが多いこの頃です。
                    私の基本方針として、可能な限り、「値段の安い高い」が選択の土俵に上らないようにしたいと考えています。
                    でないと、「本当は好ましくないけれども、値段の問題で保険診療を選択した」ということが起こりやすくなります。

                    | kitanohifukei | 治療 | 20:47 | - | - | - | -
                    脱毛レーザーは長波長の時代へ
                    0

                      私が脱毛レーザーを扱い始めてから10年近くになります。
                      この間、世の中の脱毛レーザーのトレンドは、徐々に変わってきました。

                      脱毛レーザーの主要な要素は、まず第一に波長、二番目目にパルスが出る長さ。
                      脱毛の性能は、この二つで決まります。

                      1990年代、脱毛レーザーの主流は、波長が短めのアレキサンドイトレーザー(755nm)とダイオードレーザー(800nm)でした。
                      脱毛レーザー界では、この2波長の機種の寡占状態だったため、「脱毛レーザーといえば800nm付近」が当時の常識でした。

                      2000年に入ってから、Nd:YAG (1064nm)の長波長レーザーが登場しました。
                      実は、先行する2機種(とくに755nm)は、「色黒の人の脱毛」「ひげの脱毛」には不向きでした。
                      そこで、そのような要望に応えるべく登場したのが、1064nmなどの長波長レーザー。
                      長波長レーザーは、発売当初、先行する短波長レーザーの補助的存在でした。

                      しかし、どうやら「補助的」どころか、主役レーザーとしてふさわしいことが徐々にわかってきました。
                      私が4年前から使用していた脱毛レーザーは810nmの短波長レーザーでしたが、
                      最近使い始めたメディオスターmiXTは、940nmと810nmが3:1でブレンドされているダイオードレーザーです。
                      940の比重が大きいので、「長波長」に属するレーザーです。
                      長年810nmを使用した後、940+810を使用したところ、長波長の威力に魅せられてしまいました。
                      「長波長」ですので、色黒の方の脱毛とひげ脱毛に素晴らしい威力を発揮してくれます。
                      同時に、ワキ脱毛やひざ下脱毛も、皮膚の発赤が少なく、難なくこなしてくれるのです。
                      細い毛に対しても、短波長よりも安全に脱毛できます。
                      かつて「脱毛の主役は800nm」と考えていたのは、思い込みだったようです。

                      短波長は「毛幹が熱くなりやすいけれども、深くまで届きづらい」「皮膚も同時に熱くなりやすい」
                      長波長は「毛幹が熱くなりにくいけれども、深くまで届く」「皮膚は熱くなりにくい」
                      という特性を持っています。

                      940nm+810nmのブレンドレーザーは、長短レーザーの長所を取り入れた、バランスの良いレーザーといえます。

                      脱毛レーザーは、光の性質と生体反応のメカニズムから見ると、ものすごく複雑で面白いレーザーです。
                      他のレーザー、たとえば、炭酸ガスレーザーでは、生体側の要素として考慮するのはせいぜい「水」と「タンパク質」ぐらいですが、
                      脱毛レーザーでは「表皮メラニン」「毛幹メラニン」「毛幹の太さ」「毛幹の深さ」「幹細胞のロケーション」「水分」「毛の角度」「皮膚温度」など、多数の要素を考慮する必要があります。
                      これらの多くの変数を組み合わせた方程式の「解」が波長であり、パルスの長さです。
                      脱毛レーザーを扱うことは、複雑な方程式を解くのと同じような魅力があるのではないでしょうか?

                      | kitanohifukei | レーザー | 23:22 | - | - | - | -
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