皮膚の歳時記

世田谷区の皮膚形成外科、千歳台きたのクリニックです。季節の変化と皮膚の健康の関係は切っても切り離せません。季節ごとの皮膚のお話をちょっとずつお伝えします。
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肝斑におけるダブルスタンダード・内服薬について
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    「真の肝斑」はどのぐらい割合の人が持っているのでしょうか?
    まず、シミの治療の世界で、エキスパート中のエキスパートでいらっしゃるお二人の意見をご紹介します。
    帝京大学の渡辺晋一先生の論文では、「シミで来院された患者さんのうち、約5%」「10%は超えない」とあります。
    葛西形成外科の葛西健一郎先生も、「5%でしょうかねえ」とのこと。

    この割合は時代・地域などでも、異なるとは思います。
    当クリニックでも、正確な統計はありませんが、3-5%ぐらいの感触です。
    「真の肝斑」は、シミに悩む女性患者さんのうち、
    「大体5%」と考えてよいと思います。

    「前回、肝斑の診断にはダブルスタンダードがある」と書きました。
    今回、具体的な場面での「肝斑」の定義と誤解をご紹介します。
    前回使用した「二つの基準」の図です。
    ダブルスタンダード

    1.市販内服薬。
    「トラネキサム酸」を主成分として含む市販内服薬について、考えてみます。

    この市販薬が対象とする「肝斑」は、「レーザーでは悪化する」と言っているので、「真の肝斑」です。

    この市販薬の一つの問題点は、「市販薬」として店頭で売られていることです。
    市販薬を買うときは、購入者が自分自身で診断を行います。
    薬の効果も副作用も、購入された方の自己責任です。

    冒頭に書きましたように、「真の肝斑」の方は、シミの患者さんの約5%です。
    この薬を内服したいと思う方は、内服する前に、100人中5人の「真の肝斑」に相当するかどうかを、自分自身で診断する必要があります。

    前回前々回のブログで繰り返し述べていますように、
    「真の肝斑」を治療前に判定することは、
    レーザーの経験を十分に積んだ医師でないと、かなり難しいのが現状です。
    医療機関ですら、老人性色素斑などを肝斑と誤診しているケースがかなりあります。
    その高度な診断を、全くの素人である購入者に任せているのが、この市販薬です。

    さすがに、製薬会社のほうも、対象者の割合が少ないことを良く知っているのでしょう。ウェブサイトでは、
    ご自分のシミが肝斑かどうかを購入者に「自己診断」してもらうために、肝斑についての情報と診断方法を豊富に載せています。
    驚くほど豊富な情報量です。とても親切なホームページです

    ホームページでは「実は多い、肝斑」と言う表現があり、「アンケートではシミに悩む20〜59歳の約3人に1人が、肝斑と疑われるシミ」と書かれています。
    私は、ここにトリックがあるような気がしています。
    冒頭に書きましたように、肝斑の患者さんはせいぜい5%ぐらいですから、私の感覚では「多い」という気がしません。
    「3分の1(33%)」とは、ちょっと信じがたい数字です。
    20−59歳という年齢で補正をしても、6%程度です。

    「5%の真の肝斑」を、患者さんが自分で診断できるように、会社は一生懸命に情報提供しているのですが、
    やはり、自己診断には限界があり、33%すなわち、「真の肝斑」の5倍の方が自分を「肝斑」と診断しているのが現状ではないでしょうか。
    「多い」のは「肝斑」ではなく、「肝斑と疑われるシミ」のほうなのです。
    できれば、ダブルスタンダードの使い分けなどをせず、
    「実は多い、肝斑と疑われるシミ」と書いて、整合性を持たせて書いてほしかったと思います。

    とはいえ、市販薬とは、そもそも「ある程度、患者さんの自己判断に誤診があっても仕方ない、患者さんの利便性を優先するほうが、社会への貢献度が高い」、と考えられるが故に、店頭におかれています。
    ダブルスタンダードの存在自体は、この薬以外の市販薬でも同じこと、とも言えます。
    ただ、この薬に関して言えば、購入者の自己判断が当たる確率は、かなり低いように思われます。
    仮に、ある市販頭痛薬が、「頭痛」を訴える人の5人に1人しか効かない場合、その頭痛薬は生き残ってゆくことができるでしょうか?
    仮に、トラネキサム酸が「真の肝斑」のみに対して有効で、それ以外には無効ということならば、クレームが殺到しそうな気がします。
    しかし、世の中を見回すと、そういう事態は起こっていません。
    この薬を使用する方の多くは、ちゃんと効果を感じていらっしゃるのでしょう。

    これには3通りの理由が考えられます。
    1)ここまで書いて、こんなことを言うのも何ですが、実は肝斑(真の肝斑)の割合は、5%ではなく、33%であった可能性。
    2)この薬は真の肝斑以外に、「肝斑に見えるシミ」も有効である可能性。
    3)薬の有効性の評価の仕方に問題がある可能性。

    1)と2)は禅問答めいたところがあり、「肝斑の定義は何?」という根本的な問題に突き当たってしまいまいますので、ひとまずお預けに。
    3)の可能性を見てゆきたいと思います。



     
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