皮膚の歳時記

世田谷区の皮膚形成外科、千歳台きたのクリニックです。季節の変化と皮膚の健康の関係は切っても切り離せません。季節ごとの皮膚のお話をちょっとずつお伝えします。
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レーザー閑話:その2
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     さて、前回は、炭酸ガスレーザーとエルビウムヤグレーザーについて、次のことを述べました。

    1)いずれも、水分がない組織では「燃焼・炭化」が起こり、組織温度は300℃に達する。
    2)水分が豊富な組織では、エルビウムヤグレーザーでは、ほぼ100%「蒸散」が起こり、最高温度は100℃である。炭酸ガスレーザーでは、蒸散も起こるが、燃焼・炭化も部分的に起こるため、局所的に300℃に達する。

    もちろん、「水分がない」組織と「水分が豊富」の中間ぐらいの組織、たとえば「水分がちょっとある」組織なんかでは、エルビウムヤグレーザーでも「炭化」は起こります。ですから、これは、「蒸散」と「燃焼」の割合の問題であり、エルビウムヤグレーザーのほうが、「蒸散」比率が高いと解釈するほうがより正確です。

    ではなぜ、エルビウムヤグのほうが「蒸散」割合が大きく、炭酸ガスレーザーのほうが「炭化(焦げ)」割合が大きいのか。
    この疑問について、インターネットなどで調べると、多くのサイトが以下のように説明しています

    「エルビウムヤグレーザーは水への吸収が炭酸ガスレーザーの10倍なので、焦げないシャープな切れ味になる。」

    ・・・・・・・

    この説明で分かる人は素晴らしい!!
    私はぜーんぜんわからなくて、頭を抱えてしまいました。
    この文脈、

    「水への吸収が10倍」→ブラックボックス→「焦げない」

    ではないでしょうか。端折りすぎじゃないかなあ・・・

    この問題はまず、「水への吸収とは何か」から考えなくてはいけません。
    「10倍」なんて、具体的な数値が書いてあるからには、もととなる数式があります。

    「ランベルト・ベールの法則」
    という有名な数式なのですが、数式を書くと頭が痛くなる人もいるかもしれないので、できるだけ省きます。

    「水への吸収が10倍」というのは「吸光係数が10倍」を言い換えたものです。
    この法則から私たちが欲しい情報を抜き出すと、


    「吸光係数」と「一定量のエネルギーが減衰するのに必要な距離」は反比例の関係になります。

    なお、この部分については、以前ブログでご紹介した松尾先生にヒントをいただきました。

    つまり、吸光係数が10倍だと、同じ量の光エネルギーが組織に吸収されるまでに光が進む距離は10分の1になります。
    「水への吸収係数」で考えていますので、ここでの「組織」とは、相当水っぽい組織を考えています。
    99%水分のクラゲやこんにゃく、
    80%水分の「高野豆腐モデル」
    あるいは、70%水分の皮膚など。

    エルビウムヤグレーザーでは、同じ量の光エネルギーが、炭酸ガスレーザーの10分の1のボリュームの組織で吸収されます。
    吸収された光エネルギーは、すぐに熱エネルギーに転換されます。
    つまり・・・

    エルビウムヤグレーザーでは、小さい組織の中に高いエネルギーが凝縮されますので、急激に温度が上昇します。

    *********************************

    これで「炭酸ガスレーザーでは焦げるけれど、エルビウムヤグでは焦げない」につながりましたか?
    まだつながらないですよね。
    「え?炭酸ガスレーザーのほうが温度が上がるんじゃなかったっけ?」みたいな疑問も出てくるかもしれません。
    もうひとひねり、必要です。

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