皮膚の歳時記

世田谷区の皮膚形成外科、千歳台きたのクリニックです。季節の変化と皮膚の健康の関係は切っても切り離せません。季節ごとの皮膚のお話をちょっとずつお伝えします。
陥入爪治療の現状
0
     自費診療は、「これこれの価格でこういう治療を行います」ということを、患者さんと医師がお互い了解してスタートする診療です。
    そこには、基本的に「緊急性」はありません。
    また、「主観的な必然性(患者さん本人は必要だと思っている)」、はあっても客観的な必然性はあまりありません。
    「緊急性、必然性がある診療は健康保険がカバーすべきである」「保険医療は『善』である」という考えが、日本の保険医療の根幹である・・・と思っていたのですが、

    残念ながら、この「根幹」は必ずしも万能ではありません。
    私の身近な診療で感じるのは「陥入爪」治療。
    私が医師になったころの主流は「楔状切除法」という手術。
    これは陥入している部分を、皮膚ごと爪母までざっくりと切り込み、太いナイロン針で皮膚の上に爪を重ね合わせる方法です。
    この方法は、保険適応でした。
    次に主流になったのは「フェノール法」。
    この方法も、時を経ずして、保険適応となりました。

    ところが、数年前から、「フェノール法は悪い方法である」との主張が出てきました。
    フェノール法を受けた後に、かえって爪の状況が悪くなった例を多数提示し「フェノール法はやってはいけない」とまで言われるようになりました。
    フェノール法への弾劾は、それに代わる「矯正法」の出現に伴って起こったものです。
    まあ、矯正法が優れているのはわかるのですが、そこまで過激にフェノール法を責めるべきではないだろう、と私は思ってしまいます。
    実際、フェノール法でうまくいっているケースのほうが圧倒的に多いのです。

    かくいう私も、この数年間で「矯正」を取り入れるようになってきました。
    私の医院では幸い、かのアンチ・フェノール法医師が示すような「フェノール法で悪化した」ケースはなく、ほぼ平和な結果となっています。
    にもかかわらず、矯正のほうが優れていると思われるケースが増えてきました。
    純粋に「科学的:医療的」な見地から考えると、かつて(矯正法がなかった時代に)フェノール法を行っていたケースのうち、約50%は矯正法のほうが良く、30%はどちらでも良いように思われます。

    なんといっても「切らずに済む」というのは、患者さんにとってうれしいことではないでしょうか。
    陥入爪による痛みは、ワイヤーをかけたその瞬間からなくなります。
    フェノール法と違い、治療によって爪の幅が狭くなりません。
    治療自体が痛くなく、出血しません。
    ただし、ワイヤーを外すと、陥入爪の状態に戻ります。

    フェノール法の利点は、「根治術である」点です。
    フェノール法は、爪の形にもよりますが、基本的に再発しません。
    爪の形によってはフェノール法ではうまくゆかない場合があります。

    治療現場では、爪の形・状態による適応や、患者さんの希望を伺いながらどちらかの方法を選択します。
    しかし、この選択は、「公平な選択」と言えるのでしょうか。

    フェノール法は保険適応ですが、矯正法には保険が適応されません。
    陥入爪には、「緊急性」があります。患者さんは痛くて痛くてしょうがないのです。日常生活がつらくてたまらないので、なるべく早い治療が必要です。
    「痛いから何とかしてほしい」と訴える患者さんに対して、
    「保険のフェノール法が良いか、自費の矯正が良いか?」という選択肢をどう提示するか・・・
    保険診療よりも自費の矯正法が「優れている」と思う場面が多いだけに、悩みが多いこの頃です。
    私の基本方針として、可能な限り、「値段の安い高い」が選択の土俵に上らないようにしたいと考えています。
    でないと、「本当は好ましくないけれども、値段の問題で保険診療を選択した」ということが起こりやすくなります。

    | kitanohifukei | 治療 | 20:47 | - | - | - | -
    「強い冬の気圧配置」が居座った結果・・・
    0
       今年はしもやけの患者さんが非常に多くなっています。
      同時に多いのが、湯たんぽのやけど。

      昨冬はこれらの疾患でご来院する患者さんはほとんどいらっしゃいませんでしたが、
      今冬は発症率がとても高いようです。
      いかに今年の冬が寒いかを、小さい診察室からうかがうことができます。

      前にも書きましたが、湯たんぽには決して、熱湯を入れないでください。
      60度程度が適温です。(混合水栓で出る場合もあります)

      湯たんぽは「低温やけど」、と言われていますが、
      薬缶の熱湯を入れた場合にやけどになるケースが非常に多いので、
      「低温」とは言えないような気がします。

      湯たんぽのやけどの7,8割は、3度の熱傷になります。
      皮ふが完全に壊死し、筋肉の近くまで除去しないと治らないやけどです。
      良かれと思ってしたことが仇になるのはとてもつらいことだと思います。

      まだまだ寒さが続きます。
      寒さから上手に身を守りながら、春が来るのを待ちましょう。
      | kitanohifukei | 治療 | 23:45 | - | - | - | -
      リンゴ病にご注意
      0
         今年は4年ぶりにリンゴ病が流行しているということです。

        http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110705-00000610-san-soci

        これに関して、
        10日ほど前、大阪の甥から電話があり、母親(私の義理の姉)が、はしかの疑いで、モノも食べられず歩くのも困難なほど重症だとのこと。
        発熱と皮膚の発疹があり、数日間で引いた後に、強い頭痛と嘔吐がはじまり、身動きもとれないほどだということです。
        血液検査で、はしかの抗体が陽性に出たので、「大人のはしか」かもしれないけれども、確定診断は麻疹の遺伝子検査(おそらくPCR)待ちであるとの話でした。

        2日後、遺伝子検査は陰性。麻疹ではありませんでした。

        この経過から考えるに、むしろ疑わしいのはリンゴ病ではないかと思いました。
        麻疹の抗体検査IgMは、特異性が若干低く、リンゴ病の時にも陽性になります。
        また、おとながリンゴ病(伝染性紅斑)になったときのつらさは、本当に気の毒なほどです。
        子供のうちにかかっていればせいぜいほっぺたが赤くなるぐらいで済むのに、
        オトナがかかると、どうしてここまで、と思うほど、重症感が強く、ぐったりとしてしてしまいます。

        リンゴ病に対しての抗体検査は妊婦さんだけが保険適応です。
        ですから、リンゴ病にかかった大人は、かなりつらい思いをするにもかかわらず、周りの状況証拠から「リンゴ病だったのでは?」と想像するしかないのです。

        今年の暑さで、すでに体調を崩していらっしゃる方が多いと思うのですが、
        リンゴ病でさらなる追い打ちをかけられないよう、祈るばかりです。

        | kitanohifukei | 治療 | 23:25 | - | - | - | -
        超音波診断装置が入りました
        0
           先週金曜日より、当院に超音波診断装置が入りました。
          これは、小児外科の専門領域である「小児外科」にはなくてはならないもの。
          超音波診断装置は、聴診器と同じぐらい、現代に医療には必要不可欠なものだということです。

          皮膚ばかり診ている私にとって、超音波診断装置は盲点でした。
          実は、皮膚を診る医師の間の一部では超音波診断の重要性が昔から言われていました。

          とくに、皮膚腫瘍の診断。
          現在、皮膚腫瘍の診断は、肉眼で診断する「視診」とダーモスコープでの診断を中心に行われていますが、超音波診断も20年ぐらい前から一部の医療機関では活躍していました。
          特に深さが分かりづらい皮膚腫瘍や、皮膚の下にある腫瘍、筋肉の中にあるのか外にあるのか分かりづらい腫瘍の診断などでは力を発揮します。
          従来は「触診」つまり、触ったりつまんだりして深さや位置を推定する方法が主流でした。
          触診でもだいたい診断が外れることはありませんでしたが、一部の腫瘍では触診だけでは限界がありました。
          そのような場合は、大きな病院でCTやMRIを撮っていただくしかありませんでした。
          しかし、わざわざ遠くに行っていただくため、多大な時間と費用がかかります。
          院内で超音波診断が出来るようになったおかげで、この問題が解決し、深さと位置の診断が気軽に行えるようになりました。

          いままで当院での腫瘍の診断は
          「視診」と「ダーモスコープ」・・・表面の大きさと形の診断
          「触診」・・・・・・・・・・・・・・・・・だいたいの大きさと深さ・位置の診断
          でしたが、今後これに加えて、
          「超音波」……………正確な大きさと深さ(ミリ単位で数値化できる)、周りの臓器との関係、

          がわかるようになります。
          これらは手術をするかどうかの判断、および、手術に何が必要かをあらかじめ決めるために非常に重要な情報です。
          | kitanohifukei | 治療 | 10:23 | - | - | - | -
          夫婦一緒に働き始めて
          0
             ひょんなことから、夫婦一緒に働くことになりました。

            夫はこの間まで大きな病院の小児外科医として、メスを握っていましたが、体調を崩したのをきっかけに、私のクリニックに合流しました。
            我々夫婦はいままで「医師」であり「外科医」である点では同業でしたが、それぞれ違う組織に所属し、違う場所で働いていました。
            今は家でも一緒、職場でも一緒、通勤も一緒。
            このような生活パターンが始まってからしばらく、職場と家との境目がなくなったような気がしました。
            職場にいながら家にいるような気分です。

            今までは仕事が終わって家に帰ると、夫が帰宅するまでの間に一息つきたくて、猛然と食事を作り、食べていましたが、今は夫と一緒に職場を出、ゆっくり帰って二人で用意し、長々と食後の時をすごします(二人とも外科医の早メシだけは治りません)。
            いままで「できるわけない」と一蹴していた家事も、私から言う前にやってくれるようになりました。

            仕事においては、夫という協力者が現れてくれたおかげで、助かる面が大いにあります。
            重症の患者さんが来院されたときに、相談相手がいるのは心強いものです。
            いままで避け気味だった、お子さまの点滴や採血は、彼の得意分野です。
            外科医が二人(手島先生とチータム先生を含めて4人)になりましたので、手術の幅が広がりました。
            二人の術者を必要とする手術(植皮手術など)も、ほぼ毎日お引き受けできるようになりました。

            夫は外科の中でも「小児外科」という特殊な分野の知識が豊富ですので、今後その専門知識を皆さまのお役にたてることが出来ればと思っています。来週からは超音波診断装置を導入しますので、皮膚腫瘍の診断や、おなかの疾患の診断に役立たせることが出来ると思います。

            5月からの日曜診療は、「家も職場も同じ」という心の状況からの発想でもあります。もしも夫が今までと同じ勤め人ならば、日曜日に夫を家に置いて私が日曜日に働くことは相当なストレスとなったはずなのですが、いつでもどこでもいっしょならば、どの曜日にどう働いても全く同じということで。
            | kitanohifukei | 治療 | 20:49 | - | - | - | -
            汗管腫
            0
               汗管腫の治療は、なかなか難しい。いや、難しかったというべきか。
              今回のブログでは、「以前は困難を感じていたけれども、エルビウムヤグレーザーのおかげで、今は以前よりは、かなり満足できる結果が得られるようになった」という内容を書くつもりです。
              しかし、考えてみると、「汗管腫の治療」のような施術手技における「困難さ」をカミングアウトすることには、けっこう微妙な問題があります。

              レーザーにもいろいろあって、強さやモードを適切に設定しさえすれば、照射の仕方は比較的簡単なレーザーと、強さやモード以上に、照射テクニック良し悪しが問われるレーザーがあります。「照射」というよりは、「手作業」と言うのが相応しいレーザーです。炭酸ガスレーザーとエルビウムヤグレーザーは、後者の代表的なレーザーです。

              「汗管腫の治療」のように、手作業で小さい腫瘍を丁寧に取り去る治療において、下手に「難しい」と言うと、「お前の手技が下手なんじゃない?」という声が聞こえてきそうな気がします。
              術者が「難しい」と言うときには、術者の腕が下手なのか、術者の自己規範(自分への評価)が厳しいかのどちらか、あるいはその中間のどこかであると考えがちです。
              (実は、「術者の自己規範」というものは、厄介なのです。自分への評価が厳しい術者ほど一般的に技術も高いのですが、あまりに自分に厳しすぎると、自分で勝手に「自分は手術に向いていない」と判断してメスを置いてしまうこともあります。逆に、自己規範の甘い術者は、たいしてきれいな結果でないのに「きれいに取れた」としゃあしゃあと言うし、そう言われると患者さんも信じてしまう。どうも客観的な評価というものをしづらい分野ですね。)

              教科書的には「汗管腫は炭酸ガスレーザーで治療する」のだけれども、なかなか自分の場合は満足と言える結果にならない。これは自分が悪いのではないか?と、つい考えてしまう。患者さんは、「汗管腫が小さくなった」と喜んで下さる一方、「良くなってもこの程度か」と落胆する自分があり、患者さんの中には、もしかしたら医師には言えないけれども同じ気持ちを持っている方もいらっしるかもしれない・・・
              なんてことを悶々と考えつつ、レーザー仲間の医師に自分の苦しい心を告白してみると、同僚も同じ感想を持っていると聞いてホッとする・・・自分が悪いと言うより、ナニカもっと根本的な問題がありそうだということがわかる・・・こういう状況がありましたので、炭酸ガスレーザー時代、私は汗管腫の治療を積極的に行いたいという気がしませんでした。

              結論から言うと、「エルビウムヤグレーザー」を手に入れてから、上に書いた悩みのほとんどが解決されました。つまり、「道具」が良ければ、結果が良くなるという、単純な結論となりました。
              エルビウムヤグレーザーは、料理人が鋭利な包丁を手に入れたのと同じ効果をもたらしてくれました。こういう優れた「道具」を持って初めて、以前の「道具」がナマクラであり、これで勝負をしようと思っていたこと自体、無理があったことを思い知らされたのでした。

              追記:汗管腫と同様に、エルビウムヤグレーザーへ道具を変えたことで恩恵を受けている代表的な腫瘍が、黄色種とホクロです。

              汗管腫は腫瘍性に大きくなるものもありますので、早い時期にエルビウムヤグレーザーで完全に蒸散させてしまうのが良いと私は考えます。大きくなった汗管腫同士がつながって板のようになってしまうと、さすがのエルビウムヤグレーザーでもお手上げです。腫瘍が小さく、腫瘍同士の間に十分量の正常皮膚がある間に治療する方が良いと思います。
              | kitanohifukei | 治療 | 22:39 | - | - | - | -
                   12
              3456789
              10111213141516
              17181920212223
              24252627282930
              31      
              << December 2017 >>

              このページの先頭へ